小説「悔しくないの?」 その1
2011/07/26(火)
prev:
next:
実話をもとにしたフィクション小説です。
個人的には大好きなシリーズですが、皆さんはいかがですか?過去、フィクション小説になるとアクセス数が減るという屈辱的な経験ばかりしてきました。
タイトルを「悔しくないの?」としましたが、アクセス数が減ったら、私が悔しがるんですよね・・・
文才があると思っている自尊心を、粉々に砕いてしまうかもしれません。
そんなときは、そっと応援コメントを書いてくださいね。
個人的には大好きなシリーズですが、皆さんはいかがですか?過去、フィクション小説になるとアクセス数が減るという屈辱的な経験ばかりしてきました。
タイトルを「悔しくないの?」としましたが、アクセス数が減ったら、私が悔しがるんですよね・・・
文才があると思っている自尊心を、粉々に砕いてしまうかもしれません。
そんなときは、そっと応援コメントを書いてくださいね。

「ねえ、吉澤さん。 今週末はどうですか?」
取引先の会社の「新入社員」の吉澤さんが食事に誘ってくれたのは3週間前のこと。
お互いの都合が合わなくて、食事に行けないままになっちゃって・・・
吉澤さんは「新入社員」といっても、もう立派な30歳なんです。
高校卒業してすぐに料理の道に進んで、海外の和食レストランで修業しながら貯金してたそうです。 ところが、数年前から味覚障害になってしまったんですって。
もちろん、味覚障害の治療をしたり、なんとか料理人として頑張りたかったんだけど、両親の薦めもあって、最近になってサラリーマンに転身したばかり。
だから、礼儀や口調は立派な大人なのに、ネクタイの締め方や名刺の渡し方が新入社員みたいなんです。
そんな彼に、親しみを込めて「新入社員」と呼んでいたんです。
といっても会ったのは数か月前に数回だけ。
それでも記憶に残るなにかがあったんだね。
3週間前、たまたまの再会。
会社の近所のパスタ屋さんでランチしていたとき、吉澤さんが入って来たんです。
といっても偶然ではなく、うちの会社に午後1時に用があって来たんだって。
遠くの席に座った吉澤さんと目があって、向こうも少しびっくりしてたかな。
あいかわらずネクタイは似合ってなかったけど、前よりもスーツは似合ってきたかな。
スーツが似合ってきたってことは、仕事にも慣れてきたってこと。 ひとごとながら嬉しい気分になれました。
ところが吉澤さん、食べていたスパゲッティをこぼしてしまって、ネクタイを汚しちゃったんです。
慌ててオシボリで拭いてたけど、薄い色のネクタイにはハッキリ目立つ染み・・・
ちょうど食べ終えてレジに向かっていたので、彼の近くまで行って話し掛けました。
「吉澤さん、大丈夫。 ノーネクタイでも大丈夫ですから・・・」
カッコ悪いところを見られたせいか、ちょっと慌てながらネクタイを外しながら照れ笑いを見せてました。

商談が終わって帰るところの吉澤さんをロビーで見つけ、話しかけたの。
午後の商談では、ノーネクタイだったのは彼だけで、居心地の悪さを感じちゃったって。カワイソウ。
ネクタイの有無で商談が決まるものでもないし・・・とは言えなかったけど。
ただ、ネクタイがないってだけで商談に集中できなかったとしたら、本当にカワイソウ。
「吉澤さんには、もっと色の濃いネクタイがいいと思いますよ。」
薄い色だから染みが目立ったって意地悪を言ったのに、意地悪って気付いてくれなかったんです。
だから、
「でも、イカ墨スパゲッティはダメですよ。」とからかっちゃった。
吉澤さんは、頭をわざとらしく掻きながら照れ笑いを浮かべて、なんか嬉しそう。
私がクスって笑うと、彼も嬉しそうに微笑んだ。
「今度、ネクタイを選んでくれませんか? お礼に美味しい食事、ご馳走いたしますんで・・・」
元料理人のお勧めの食事なんて、素敵なんじゃないかな?
食欲と誘惑に負けて即答でOKしちゃったんです。
それが3週間前のこと。

そして昨夜からは、吉澤さんのことを遼くんと呼ぶようにした。
出会いの頃とは、人間関係も全く変わっちゃったから。
昨日一緒に買ったネクタイを着けた彼に、小さなお皿を手渡した。
小さな白いお皿。特に絵も飾りもないお皿だけど、彼は呼吸を荒くしながらお皿を凝視するんです。
「遼くん。 そこに射精するって約束だよね。」
固まったように動けなくなちゃった彼の手からお皿を取り、私の足元に置いてみたの。
「ここでね。」
床に置かれた皿を指さしながら意地悪く笑ったら、彼はもっと固まっちゃった。

商談の勝負服にしているブランドもののスーツ。
履きなれている低いヒールのパンプスではなく、新調したばかりのハイヒール。
少しキャリアを感じさせる雰囲気のメイク。
そして私が立っているのは、彼の住む部屋の中。
部屋の中に土足で上がりこんじゃった。 彼に一言の断りもなく、ね。
私から見ると、彼の身長は、いつもより低く感じたんです。
彼からは、私はどんな風に見えているのでしょうね。
「約束でしょ? 早くしなさいよ。」
彼の屈服の瞬間、もうそこまで迫ってるね。
でも、ここからは観察するだけだよ。
だって、そうでしょ? 自分で屈服しなくちゃ、屈服って呼べないもんね。

あ。もっとフィクション要素を入れないとダメかな?
R君、これくらいだったらOKですよね?
prev:
next:

