小説「暗闇」 その2
2013/02/10(日)
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せっかく書いたのに、アップロードに失敗しました。書き直すのって大変なんですよ


タイツの爪先に吸い付く男を見下ろしてクスクスと笑ってしまった。
初めて触れた私の体が、タイツ越しの爪先だなんて可哀想。しかも私の匂いを擦り込まれて、美味しいと本能に刻んでいっている。
まだ始まって30分。そ れなのに、もうこんなに・・・
口の中で指を動かしている右脚。
左足の土踏まずをそっと男の目の上に置いてみる。旅行用の目隠しの上から、そーっと足を置いて、少しずつ体重を乗せていく。
小さな呻き声が漏れる。
今はまだ痛みの恐怖を与える段階じゃない。本能が欲しているものを与えてあげる段階。
もう一度だけボウルの水をタイツに染みこませて、しゃぶらせた。
ボウルの中の水は、結局半分以上残っている。きっと20ccくらいしか水分は摂れていない。
喉の渇きは、呼び水を注されただけで、まったく潤されていない。
「もっと欲しいかもしれないけど、オアズケね。」

この貸別荘に到着する前に寄ったスーパーで買った食料の中からパン粉を見つけ出すと、履いていたタイツを脱いだ。 濡れていない左脚のほうに乾いたパン粉を一握り入れた。さらに一握り。最後にもう一握り。
タイツの爪先にパン粉を詰め終わると、男のそばに戻って耳元で優しく呟いた。
「あーん。お口を大きく開けなさい。いいものあげるから。」
目隠しをされているから表情は分からないけど、きっと不安と期待の混じった表情をしているに違いない。でも、これからすることを教えたら、きっと不安だけの表情になる。もしかしたら不安と恐怖なのかもしれないけど。
不安のためなのか、小さくしか開かない男の口。
無理矢理開かせても楽しいけど、自発的に開かせることに意味がある。
パン粉の入っていない右足の爪先部分を男の鼻先につける。
さっき与えられた水分を思い出させてみる。
「もっと美味しいお水を飲ませてあげるから、大きくあーんしてごらん。」

君の口に突っ込まれたもの、なんだか分かるかしら?
それはね、パン粉を詰めたタイツ。 カラカラに乾いたパン粉は、口の中の水分を全て吸収しちゃうよ。
唾液で喉を潤すことすら許してあげないからね。
私のタイツに一度は潤され、そして全ての潤いをタイツに奪われたんだよ。
私の匂いの染み こんだタイツ。
ただのタイツ。
タイツに染みこんだ水を吸って、君は潤された。
タイツに詰め込まれたパン粉に、君は苦しめられている。
喋ることもできないんだから、諦めなさい。
さっき言ったよね。
あと3時間経ったら、コップで水を飲ませてあげるって。
もっと美味しくしてあげるって。
私は約束をちゃんと守るよ。
あと3時間、そこで転がったまま苦しんでなさい。
私の匂いと、水の嬉しさと、乾きの恐怖。
3時間かけて、脳に刻むんだよ。
私に施錠されるってことが、どういうことなのか、ちゃんと理解できたらいいね。

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