ショートストーリー その2
2007/11/09(金)
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大阪に転勤してから、なかなか会えなくなったアイツ。
クリスマスに帰ってくるって言ってたけど、仕事は年末が近づくにつれ忙しさが増しているに違いない。 年末ギリギリに帰ってきても、彼は実家に泊まってしまう。
いっそのこと、大阪に行こうかな?
でも、大阪の彼の部屋には、私が見てはいけない何かがある気がして、遊びに行く勇気がなかった。
もう別れようかな・・・
そんな言葉が脳裏に浮かぶ。 そして消していく。 自然には消えていかないから、意識的に忘れようとする。 意識すればするほど、完全には忘れられなくなってしまう。
悲しさと寂しさが、胸の中に満ちてくる。 クリスマスに向かって加速していく。
「急なんだけど、明日の夜、空いてる?」
仕事の最中に携帯にメールが入った。 アイツから。
仕事で東京に来る。
週末を東京で一緒に過ごしてくれるみたい。
「汐留のホテルに宿泊予約をしたから、、、」
東京に来ると言っても、接待があるから待ち合わせは夜11時。
ホテルのロビーで待っていても、時間どおりにやってくることはない・・・
仕事を早めに切り上げ、一旦家に帰る。 お弁当屋さんで総菜を買って、家でご飯を炊いて食べた。 少し休んでからシャワーを浴びて、待ち合わせのホテルに向かった。
約束の時間を15分過ぎたころに、彼は姿を見せた。
シングルで予約している部屋に、こっそりと忍び込む。 さっきまで、人気の少なくなったロビーで待っていた私。 ホテルのスタッフが気付かないはずがなかった。
でも、どのホテルでも見逃してくれる。
そういう風俗と勘違いされているのかもしれない。 私のしていることは、そういう女と同じようなことなのかもしれない。
一緒に食事もせずに、ひとりシャワーで身体を洗ってから、エッチのためだけに夜遅くに男の部屋に入り込むんだから・・・
だったら、いっそのこと・・・
部屋に入ると、彼は薄手のコートを脱いでハンガーに掛ける。 もうひとつのハンガーを手にとって、私がコートを脱ぐのを待っている。
彼に背を向けて、コートの脱いだ。
どう?
コートの下は、予想と違うでしょ?
いつもと違う服装。
ノースリーブ白いワンピース。 白いベルト。 背中が開いているから、ブラをしていないって気付かれるデザイン。
コートの上からは想像してなかったでしょ?
微笑みながら彼を見つめる。
少し恥ずかしそうな表情を見せると、彼も照れたような顔になる。
バッグから白いロングの手袋を出して、身につける。
「白いところは触っちゃダメだよ。」
彼は、私の足下に跪いて、脚に頬を寄せる。
私が服を脱ぐつもりがないことに気づいた彼。
「いっぱい苛めてあげるね」
って言ってあげた。
恥ずかしそうに俯いてはいるけど、嬉しさで体が震えている。
喜ぶのは、まだ早いよ。
話は最後まで聞かないと。
「今日が最後だから・・・」
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