ショートストーリー その3
2007/11/10(土)
prev:
next:
昨日の記事は、少し寂しい感じでしたね。
癖になってしまってからの別れは、きっと辛いはずです。

「その靴、可愛いですね。」
会社の後輩の男の子に声をかけられた。
週末に買ったばかりの靴をはじめて会社に履いてきたら、すぐに褒めてくれた。
この前も買ったばかりのパンプスを履いきたら、すぐに気づいてくれた。
「お洒落な感じですね。 どこで買ったんですか?」
「うちの嫁にも、こういうの買ってあげようかなって思ってるんですよ。」
若いのに結婚している彼は、社交的で明るい性格。
誰にでも気軽に話しかける性格は、多くの人に好かれているみたい。
既婚者じゃなければ、罠にかけてあげるんだけど・・・
「え〜。 森田君って靴フェチ?」
普通の男だったら、真剣に否定する。でも、彼は違った。
「う〜ん。 靴フェチっていうより、脚フェチですね。」
周りにいた他の女子社員からも笑い声があがるけど、彼は楽しそうにしている。
笑い声や楽しそうな話声で賑やかになった経理部。
「へえ・・・ 脚フェチなんだ・・・」
彼にだけ聞こえる小さな声で呟いた。
一瞬だけ彼の時間が止まった。
「あの・・」
とシドロモドロになっている彼から目を逸らして、ディスプレイを見つめてマウスを動かす。
「いいこと聞いちゃった♪」
「じゃあ、そろそろ・・・」
経理部においてある経費申請書を持って、部屋の出口への向かう彼。
「あ。森田君、ちょっと待って・・・」
振り返る彼の携帯からバイブレーターの震動音が聞こえた。
PCから彼の携帯にメールを送った。 送信から3秒で着信した。
「あれ? 今、携帯、鳴らなかった? お客さんからかもよ。」
慌てて携帯を開く彼。
【本当に脚フェチなの?】
その題名を見て、彼は凍りついたような表情になる。
私はディスプレイを見ながら微笑む。
彼の反応を見ていたいけど、それよりも次のメールを送信したいから。
【返事は?】
私は仕事をしているフリを続けているけど、彼の視線を感じる。
彼は、慌てて携帯からメールを送ろうとしている。
「慌てて返事を書くなんて、よっぽど大切なお客さんから?」
【はい】
彼からのメール。 題名だけ。
【それなら・・・】
とメールを打つ。こちらも題名だけ。
彼がこれを見た瞬間に話しかける。
「マウスが調子悪いからPCから外して欲しいんですけど、ちょっと見てもらえますか?」
そう言って机の下のPCを指さす。 彼は、何が起きているのか分からないような表情のまま、私のそばで四つん這いになって、机の下に入っていった。
私の机の下に潜り込んで、PCの裏に手を伸ばし、マウスのケーブルを探し始めた。
私は、椅子に腰かけて、机の下を覗き込む。そして、彼の作業している脇に、私は脚を伸ばす。
マウスを動かすと画面のカーソルが動いている。 調子が悪いなんて嘘。
「はずれましたよ。」
机の下から声が聞こえた。
「あ。 ごめん。 やっぱり繋げておいて。」
と言って、PCと彼の間に脚を滑り込ませた。
私の脚が邪魔で、PCに手が届かない。
「何か邪魔だったら、どけていいですよ。」
彼の手が、私の脚に触れる。
わずかに震えながら、丁寧に 触っている。 少しだけ脚を引っ込めてあげた。
「あ。 これで繋がりました。」
マウスは繋がったけど、すぐに机の下から出てこない彼。
しばらくして、彼は真っ赤な顔ででてきた。
「ありがとう。 今度また調子が悪くなったら、見てもらえますよね?」
口数が少なくなった彼。 饒舌になった私。
「え、えぇ。 いつでも・・・」
「いつでも? いつでも飛んでくるのかな? あはは。」
最後にもう一度メールを送った。
【奥さんには内緒にしておくの?】
もっと脚フェチにしてあげる。 奥さんでは満足できなくなるほどにね。
prev:
next:



