小説「社長秘書」 その3
2013/06/26(水)
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社長が遅刻した。
無断で遅刻した。
親会社の専務から怒られるのは、なぜか秘書である私だった。
電話の受話器から専務の怒りが伝わってきて、涙が滲みそうだった。
でも、とっても意外な言葉を聞くことができた。
「君は教育係なんだよ。分かってるのか?」
なーんだ。
そうだったのか。
ダメ社長の教育係だったなんて知らなかった。
じゃあ、もう遠慮はいらないね。
「1ヶ月で、ちゃんと教育します。」
受話器を通して、私は宣言した。

ねえ、ケンスケ。
今日も専務に怒られちゃったよ。
ねえ、聞いてるの?
「なんで秘書のお前が、社長の居場所を知らないんだ」って。
凄い剣幕で叱られたんだよ。
ねえ、分かってる?
ケンスケのせいで、私が叱られたの。
どうやって責任をとるつもり?
私ね、ケンスケに責任を取って貰う方法を決めたんだ。
とっても簡単。
今日から携帯のGPSで居場所を知らせてもらうだけ。
いいよね。
たったそれだけで、私が叱られなくなるんだよ。
ケンスケの居場所は、24時間、私が監視してあげる。
ケンスケがサボったら、すぐに分かる。
もう私には、嘘をつけなくなる。
私に内 緒でサボったら、すぐに見つけてあげるからね。
オシオキしてあげる。
ケンスケが社長らしくなるまで、GPSは切っちゃダメ。
分かった?
じゃあ、ケンスケのiPhoneを貸して。
あとでパスワードを教えてね。
ケンスケの自由は、全て奪ってあげる。
明日からは、私よりも早く出社できるよね?

iPhoneの「友達を探す」というアプリで、GPS追跡ができるんです。
私の奴隷ちゃんになったら、気が向いたときに居場所を探してあげるの。
そんなことにも興奮しちゃうようだったら、それは「破滅願望」かもね。
ねえ。
貢ぎ奴隷の君。
貢ぐのはお金が掛かるから、もう辞めて、GPS追跡されてみる?
あはは。
興味あったら報告しなさい。
もっと壊してあげるからね。
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