fun復刻:男を思い通りに操る術、教えます。

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元の投稿者であるCHIKAさんではありません。主にWaybackMachineなどを元に作成されました。 また、私はこちらのサイトと同じ人物です。CHIKAさんにOKをもらっています。

ねえ、君も・・・ その1


フィクション小説です。

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「ねえ、君もオブジェになってみる?」

週末で賑わうBarの片隅で、唐突に切り出してみた。
相手は、ブログがキッカケで知り合って、飲み友達になった達彦。
私のブログを毎日欠かさずに読んでいるだけあって、オブジェという言葉に敏感に反応する。

「そうやって僕をからかうのは・・・」

少し困惑した表情を浮かべる彼。 自信たっぷりに微笑む私。
お酒に弱い彼が、ジョッキに半分くらい残っていたビールを一気に飲み込む。

「だから、僕をからかっても・・・」

私は、微笑んだまま1ミリも動かない。
彼が誤魔化そうとしている限り、私は反応しないと決めたから。

「どうしたらいいのかな・・・」

困っている言葉とは裏腹に、彼の心に徐々に何かが蠢き始める。
その「何か」が何なのか、ふたりとも分かっている。
でも達彦は口にすることを恐れている。

「今の関係で満足してるから・・・」

そう。
男と女の関係でもないし、SとMの関係でもない。
たまに会ってお酒を飲んで、ブログの話をするだけで達彦は満足している。

ここから一歩でも動けば、今の関係は一瞬で消えてしまう。
沈黙が、彼をなおさら困らせている。

周囲が静かになった瞬間を選んで、私が沈黙を破る。
もちろん、救いの手を差し伸べるはずもなく・・・

「このままの関係だったら、私は飽きちゃうと思ったから提案したんだけど?」

そして沈黙する。
私は沈黙を破らない。
二度目の沈黙を破るのは、達彦の役割だから。

「・・・」

口は動いている。でも言葉が出てこない。
額に汗が滲んでる。
ハンカチを取り出して額を拭うのかと思えば、そうではなく手の平の汗を拭いている。
鼻の頭にも、じっとりとした汗が滲んでいる。

決心を固めようとする心と、何かに怯えている心。
撒かれた餌に近づいても大丈夫なのか分からず、遠巻きに悩んでいる野良猫みたい。

ハンドバッグからお財布を取り出し、千円札を3枚、テーブルに置く。
そしてお財布をしまい、腕時計に視線を落とす。

沈黙のままなら帰っちゃうよ。
そういうシグナルを送る。彼と目を合わせないようにしながら。

「あの・・・あの・・・」

小さな声。
聞こえないふりをして、立ち上がる。
ぐるりと周囲を見渡して、Barの出口の方向を確認した。

Yシャツが汗で滲んで、色が変わっている。

「オブ・・・オブジェ・・・」

オブジェになってみるかと聞いてから、まだ5分も経っていない。
他愛もない話を笑って聞いていたときとは別人のような顔つき。
彼の心の中で蠢いていた「何か」が、はっきりとしたものに変わった。

その瞬間は、絶対に逃がさない。

「冗談だよ。」

何を真剣になっているの?
という冷めた目で見下ろす。

「イジメテ欲しいって思ったら、言ってね。却下してあげるから。」

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気分転換で店を出て、あてもなく街を歩く。
飲み足りないのでもなく、話し足りないのでもない。
達彦の心の中で消化できなかった「何か」を、もっと知りたいだけ。

歩いてきた細い道の突き当たりにラブホテルの入り口が見える。
彼の腕にしがみついて、恋人のように甘えてみる。というよりも甘えている演技をしているだけ。

突き当たりまで10メートル。

「ねえ、君もオブジェになってみる?」

達彦は、黙って小さく頷いた。

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〜 後記 〜
涼しくなってきましたね。
「オブジェ」がなんだか分からない読者は、昔の記事を読み漁ってきて下さいネ。
そうすれば、「達彦」に一歩近づけますよ。

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